いつでもコッコ日和 第10号

オスは結構ストレスを感じているかも?

6月中旬現在、COCO相木では午前2時前後にオスが一斉に鳴き始めます。でもそれは時間にして一瞬の出来事ですぐに鳴きやみます。いわゆる朝鳴きが始まるのは3時前後。1羽が鳴き始めると立て続けに20~30分の間、入れ代わり立ち代わりひっきりなしに鳴き続けます。その後、次第に鳴く間隔が伸びていき、だんだん落ち着いていきます。4時過ぎに餌やりに行きますが、その頃にはあちらで1羽が鳴いて、しばらくしてこちらで1羽が鳴く、という位にまで落ち着いています。基本的に鳴くのは一日中ですが、午前中が比較的頻度高めで、午後は忘れた頃に鳴くというような感じでかなり間隔があきます。知らない人が来たりすると、高いところに登り、縄張りを主張するかのように鳴き始めたりします。

そもそも、雄鶏はなぜ鳴くのでしょう。「雄鶏が鳴くのは、縄張りを主張し、(侵入者に)警告を発するためだ。予備段階のデータだが、最も地位の高い雄鶏には夜明けを告げる優先権があり、(地位の)低い雄鶏は毎朝、最高位の雄鶏(が鳴くの)を待ってから、あとに続いている」と名古屋大学の研究チームは分析しています。NHKの番組「チコちゃんに叱られる!!」でも「『俺様が一番ケンカが強いんだぞ』アピール」とし、他のオスグループに対し、朝鳴くことで縄張りを主張、無駄な争いを避けるような仕組みになっているとしています。

どのオスがどのタイミングで鳴いているかを実際に見ていないので確認できていませんが、2年目のボス格のオスが一番綺麗でよく通る鳴き声ですが、そのオスがまず鳴き始めて、それに他のオスが続いているように思います。

ちなみに鳴き始めるタイミングは、体内時計で感知し日の出の2時間前位から鳴き始めるという研究もあるようですが、夏も冬もそれほど鳴き始めの時間に変わりはないように感じます。夏至と冬至とでは日の出の時間に2時間以上差がありますが、鳴き始めの時間には30分位の時間差しか認められなかったといった報告もあったりします。

先述の「チコちゃん」でも解説されていますが、ニワトリは極めて社会性の高い生き物で、一般的にオス1羽に対して10羽から30羽のメスがパートナーとしてハーレムのような状況で暮らしていました。家畜として育てられるようになった今でも、その習性は変わらず、オスが複数羽いる場合はタイマンによる喧嘩で厳密に順位付けが行われています。

朝鳴きはその順位を確認する作業で、日中でもたびたび順位の高いオスが低いオスに対してつついて順位を確認するという行為が確認できます。

餌やりの際にも、メスは一斉に集まってきて餌に飛びつきますが、オスはそれぞれ他のオスと一定の距離を保ってメスの集団の外側に陣取り、しばらくは集団(の安全?)を見守っています。順位の低いオスが先に食べ始めると高いオスが突いたりします。メスがみんな食べ始めて、落ち着いたらオスも食べ始めます。食べる場所にも上座下座があるのか、餌を撒き始める鶏舎入口付近に順位の高いオスが陣取り、餌を最後に撒く庭への出口付近で順位の低いオスが食べていたりします。

COCO相木では現在3つの区画に分けて、それぞれ集団で飼育していますが、メスはそのネットをかいくぐり区画を比較的自由に移動しています。食いしん坊なメスなどは最初に餌やりをした区画にいたはずなのに、2つ目の区画で餌やりを始めると、ちゃっかりそこに移動して一番手前に陣取っていたりします。一方オスは、区画間を移動することは滅多にありません。たまに間違って別の区画に紛れ込んだオスがいたりすると、そこのボス格のオスにケンカをふっかけられるので、余計なトラブルを避けるためにも移動はしないのでしょう。

縄張りを主張しているだけあって、オスは放し飼いに設定している敷地から外に出ることも滅多にしません。メスは外に草が生えていたりすると何とか抜け出して草を食べたりしていますが、オス1羽だけだと扉が開いていても外には出ません。外界に対して臆病なのかなと思っていましたが、メスが大量脱走したときなどは一緒について行きますので、考えようによっては、外界に出たメスの安全を守るため見張り役を買って出て一緒について行った、ともいえます。

外でメスが一心不乱に地面を突いている時でも、頻繁に顔をあげて周りを見回しているオスの姿は何だか涙ぐましい光景です。何か不審なことがあった時も、警戒を伝える「グァグァグァ…」という声をまず発するのはオスです。

 

ちなみに鶏には精子貯蔵管が存在し3~4週間精子を溜めておくことができます。これは精子が排卵のタイミングを待つための一時的な貯蔵の場と考えられていますが、運動能力の低い精子はこの貯蔵管に侵入できないとも言われていて、高い運動性を有する精子の選択という機能もあると考えられています。順位の低いオスは交尾をしようとしてもメスによく逃げられていますが、万が一成功しても、その精子が使われないこともあると考えると、彼らを見ていて複雑な気持ちになります。